Niseko Winery Mr. and Mrs. Homma

付加価値の高いオーガニックワイン造りを、地域に貢献できる事業として育てたい!

笑顔の本間さんご夫婦
Interview date: December 27, 2017
ニセコ町の中心部から車で10分ほど走った羊蹄山の麓。標高200メートルほどの丘陵に位置する近藤地区に、ニセコ町唯一のワイン醸造所「ニセコワイナリー」はあります。
約4ヘクタールの広大な土地に植えられたブドウは、100%無化学農薬、100%無化学肥料の有機農法で育てられ、収穫後、敷地内に設けられた醸造所で醸造工程を経て、希少なオーガニックスパークリングワインとなります。
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ニセコワイナリーのワイン

このワイナリーの経営、ブドウ栽培、ワイン醸造のすべてを一手に手がけるのが本間泰則さん。この地に移住する以前は、日本の銀行、国際機関、外資系銀行で働き、長く海外駐在も経験したビジネスマンでした。元来ものづくりが好きだった本間さん、イギリスに赴任中に巡ったヨーロッパのワイナリー体験が契機となり、第二の人生の夢をワイン造りに定めたといいます。
「『ワインが好きなら買えばいい』と言う人もいますが、自分の手でブドウを育てて、自分の手でワインを造る。『つくる』ことへのこだわりこそ、最高の喜びだと思っています。」と笑顔で話す本間さん。しかし、ワインを造ることだけで本間さんの夢は完結しません。ワイン造りを通じてニセコの地域振興、産業化による経済の発展に結びつけることこそが、今望む夢の最終型なのです。
泰則さんのワイナリー造りをサポートする妻の眞由美さんは、絵本作家でもあります。2003年に上梓した世界の多様性がテーマの絵本『うまれたてのいろ』は、7カ国語に翻訳され、今も多くの子ども達に読まれています。自宅の一室を、多言語絵本を取り揃えたライブラリーとし、近隣の子どもたちやワイナリーを訪れた家族が楽しめるスペースとして開放しています。また、地域ボランティアとして「絵本を介して子供たちの世界観を広めよう」をテーマに、ニセコ町役場勤務の代々の国際交流員とともに、多言語読み聞かせ活動も行っています。
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多言語絵本を取り揃えたライブラリー

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ブドウ畑は深い雪の下

本間さんのご自宅を訪ねたのは12月の末。広大なブドウ畑は深い雪の下。しかもその日は吹雪模様となり、羊蹄山を正面に見えるよう設計したという居間の窓の外は、残念ながら白一色の世界でした。どっしりとした大きな鋳物の薪ストーブの炎が赤々と燃える暖かいお部屋で、本間泰則さんと奥様の眞由美さんに移住の経緯やワイナリーの話を伺いました。

Please tell me the chance and circumstances of being moved to here.

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ご主人の泰則さん

泰則さん「当時横浜に住んでいたんですが、2003年春に、妻の兄から『一緒にニセコ町近藤地区に畑を購入しないか』と誘われたのがきっかけですね。ここは学生時代からスキーをしに何度も訪れていた地域なので、親しみのある土地だったというのもありました」
 
眞由美さん「私は、絵本を創作していて、自分の言葉がどこから生まれ、紡がれたかを考えたとき、故郷北海道の風土と思い当たったんです。幼年、少女時代を札幌市円山や藻岩山の麓で五感を研ぎ澄まして遊び暮らした中で、自分の言葉が育まれたと。そんな強い郷愁に駆られていたタイミングで、兄から土地購入の話があったので、ニセコ町に大きな縁を感じました。」

当初からここでワイナリーを、というお考えだったんですか?

泰則さん「イギリス駐在中にワイン造りの夢が膨らんで、候補地はオーストラリアやニュージーランドなど国内に限らずいろいろあって、直接視察に行ったりもしたんですが、そのころ丁度ニセコの土地の話が出て、ブドウ作りの適地という選び方だけではなく、自然環境の素晴らしさ、四季折々の美しさ、スキー場が近いなど、自分たちが暮らす環境という観点も含めた総合評価で、ここに決めました。2005年に現在住んでいるこの土地が売りに出て、ブドウ畑の分も含め6000坪を購入しました」
 
眞由美さん「私はもう都会暮らしに疲れ果てていましたし、子育てが終わったら自然の中で暮らそうというのは、二人の間で暗黙の了解でしたので、夫がその辺も汲み取ってくれ具体的に計画が動き出しました。夫の目指す方向にも賛同、協力したいと思いました」

ワイナリーの計画立ち上げからここに至るまで、いろいろご苦労もあったのでは?

泰則さん「端から見ると『なんでそんな大変なことを』と思うかもしれませんが、自分が楽しむために事業を興したので、苦労だと思ったことはないですね。楽しいんです(笑)。ニセコのこの雄大で美しい自然の中で自分のやりたいことを朝から晩までやれているわけですから。私の場合は、会社勤めを終えた後の人生において、素晴らしい時間の過ごし方だと、とても納得しています」
 
眞由美さん「当初は東京で仕事をしつつ、週末にニセコに来るというハードな生活でした。金曜の夜、羽田を発って千歳に着いてからレンタカーで来て農作業。日曜の最終便で帰るという生活を5年ほど続けました。体力的にきつかったですが、好きで選択した道、暮らしでしたので、精神的には充実していました。ニセコ通いで出会った町の方々の心温かさがとてもありがたかったです」
本間さんご夫婦

移住してからの自治体のサポートはいかがでしたか?

泰則さん「とても強力なサポートをしていただきました。特にワイナリーに関しては、醸造用ブドウを栽培する認定農家として認めてもらったのに続いて、ワイン特区の取得申請を役場にお願いして、わずか2ヶ月という異例の早さで特区になりました。小規模でも醸造免許が得られるワイン特区でなければ、このワイナリーへの投資はとてもできなかった。役場がすぐ動いてくれたおかげと感謝しています。醸造所建設に際し、無利子で長期に借りられる制度金融に加え、町と国からの各種補助金などの面でも、大きな力を貸してくれました。町民がやろうとすることを全力で応援するのが、役場の役割だという姿勢を強く感じましたね。他の自治体では、そうそうスムーズに行かないことだと思います」
眞由美さん「ニセコは環境モデル都市なので、ニセコワイナリーが環境と身体に優しい有機栽培でブドウを生産しているという面も理解してくださり、役場からバックアップしていただいています。またニセコ町には外国人の移住者も多く、多様性を認めあい活かしあえる環境で子どもたちにのびのび育ってほしいです。そんな想いを込めて絵本での多言語読み聞かせボランティア活動を、2013年2月からの国際交流員4人の方たちと共に始めました。温かいふれあいの中でニセコの子どもたちに異文化体験していただきたい。この活動は、役場を始め、ニセコ町学習交流センター「あそぶっく」、各学校のご理解やご協力を得て、今現在も続いています」
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奥様の眞由美さん

将来にどのような夢を描いていますか?

泰則さん「ニセコのハンディとして、夏場の就業機会が少ないことがあげられます。ベースとなる経済的基盤が弱いので、一年を通して安定的に食べていける若い世代は少数なんです。だから定住できない。そこを将来的になんとか変えたいという気持ちがあるんです。より付加価値の高いものを生産、加工、販売することで、農業所得を高め、安定化できると。有機でブドウを育てて、ワインをつくるという可能性を試しているんです。ゆくゆくはこの地域でのブドウ造り、ワイン造りを広げたいというビジョンがあります。農家が収穫したブドウをここに持ち込んで一緒にワインを造ることから始めて、やがて小さなワイナリーが多数できれば、地域としての豊かさが生まれるのではないかと。」
眞由美さん「家族が楽しく憩えるようなワイナリーへ。ワイナリー造りのお仲間も欲しい。実は、もうすでに有機認証をとってブドウの苗木を植えようとしている移住者の方が現れているんですよ。農家の跡継ぎの方で、ブドウ作りについて相談に来られる方も増えています。ヴィンヤードはニセコの美しい風景によく似合うと思います。美しい風景からはアートが生まれます。いろいろな分野のアーティストに来て暮らして作品を生んでいただきたいです。」
 
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札幌の中学生から届いたお礼状

泰則さん「先日、札幌の中学校の生徒さん約40名が、2年連続で修学旅行の実学研修で来られたんですよ。前年と同様に「ニセコの農業と、付加価値の高い有機ワインの価値創造」というテーマで、1時間ほどの授業をさせていただいて、とても喜ばれ、後日受講された生徒さん全員が寄せ書きしたお礼状まで送ってくれたんです」
 
眞由美さん「ニセコ高校の農業科、観光科の生徒さんも、果樹農業の実習として来ていただき、ブドウを有機で育てるということの意義も実感していただいています。役場や観光協会を通じて、他にもいろいろな学校から実習や講義の要請があります。若い方々とのふれあいに感謝しています」
泰則さん「次世代へのメッセージとして、学んでもらう機会を提供できたり、みんなが楽しんでもらえる場所になるというのが私たちの目標で、このワイナリーを地域に貢献できる事業として、育てていければと願っています」

Finally, would you advise someone who is planning to emigrate?

泰則さん「ある程度の時間をかけながら徐々に軸足を移し、最終的に移住することを勧めます。まずは、たくさんの人たちから、移住環境の情報を正確に把握し、しっかり準備をしてください。厳しいようですが、『なんとかなるだろう』という考えではなんとかなりません。快適な住居、自家用車の確保。物価の面などを考えると、ここは都会よりお金がかかるかもしれない。自分がやれること、やるべきこと、目的を実現するためのスキルを持っていることをちゃんと考えて、具体的なシナリオを描いて、条件を整えてからでなければ、ニセコの定住はそんなに甘くはないし、ハードルは高いと思いますよ」
 
眞由美さん「雪に惹かれて来る人が多いですが、恋愛して結婚して子育てをするとなると、経済的な壁にぶつかって、都会に戻ったという方の話も聞きます。逆に定住がうまくいっている人は、目的を持って、そのための資金をある程度貯めてからくる人が、やはり成功しているようですね。自分のやりたいことを、少しずつ少しずつ固めていくというやりかたのほうが、やっていけているのではないでしょうか」
ワインと絵本を手に本間さんご夫婦

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