3:計画はどんな内容か 3-2-2

3-2-2.水循環の保全と育成を進めるために、水循環の保全を基本的な考え方とする。

(1)水環境の保全と育成を、水循環の中で考える

 水の循環は、目に見える河川環境だけではありません。降水からはじまって蒸発する気象現象も、水の循環の大きなサイクルです。また、河川やその周辺に生息するさまざまな動植物や河床の土などが形成する多様な生態系も、河川の水循環の重要な一部を構成しています。川を遡上するサケなどは栄養素を海から山に戻す重要な役割(物質循環)を担いますし、森に生息する野鳥も糞や種子を周辺に散布し森を広、げ水の貯留を増やす大きな役割を果たしています。
 自然環境における水の循環は、地球におけるさまざまな恵みを持続的に保証する絶妙なバランスの上に成り立っているのです。

(図)

環境の循環の階層1:地球と宇宙2:生態系(生命活動)3:人間社会
持続可能性をもたらす循環の3つの機能大気循環と水循環2-1.生態系における栄養無機塩(リン、窒素)の循環2-2.生態系における栄養無機塩の循環を補完する外洋の循環産業循環
1 資源の導入・太陽光による地表の熱・太陽光と水 ・産業資源
2物質循環(=エネルギーと物質の両方を込みにして) (図1) ・大気の上昇と下降に伴い、水分の蒸発と降水を行う。         ・降水は森林による緑のダム機能を経て河川流域を辿り、海洋に注ぐ。・植物が土から栄養素を得て光合成し、植物を動物が食べ、植物と動物の死骸や排泄物は微生物が分解して土に戻す。=生態系における生産→消費→分解の循環。         ・生物の多様性によって各々の循環のサイクルが種によって異なり、相互の循環に結びつく。・河川などの懸濁物栄養塩の流入や海洋生物のデトリタス(死骸)栄養塩は海底に沈殿するが、波浪、海潮流による混合拡散輸送や湧昇により海面にわき上がり、再び植物プランクトンを育て魚になり、鳥や遡河性回遊魚によって陸地や山に栄養素が循環し、陸上生態系が回復する。・漁村、農村、都市を結ぶ、産業と物流の循環。その各 段階でさまざまな廃棄物が出るが、それらは産業間連携によるゼロエミッション化と、土の栄養素(肥料)として自然生態系に還元できると、作物や鳥よって形 成される森林などとなって、自然生態系と人間社会の循環が維持される。
3 廃物と廃熱の廃棄・蒸発して露点に達し、熱を大気に渡したあと降水(気化熱が大きいのが水の特性)・排泄物が生態系的に分解されないまま集中的過大に放出されると、生態系的な分解処理能力を阻害する。 ・生態系の物質循環に組み込まれない物質が大気や水や土壌に拡散した状態が汚染。
(図1)
  • 注2:「ゼロエミッション」=ある産業の生産工程から排出される廃棄物を別の産業の原料として利用する、完全循環型の生産システムを指します。ニセコ町の場合は、農業と観光業などの間で、ゼロエミッションのシステムを構築することなどが考えられます。 

 一方、私たち人間社会の場合はどうでしょうか。私たち人間も、歴史のある時期までは、生存活動や生産活動を通じて、自然生態系の多様化に少なからぬ貢献を果たしてきました。自然のサイクルに見合った農林漁業、自然界素材を用い物質循環に適合した加工製造業、そして、適量の消費とゴミの自然還元は、人間の活動が自然生態系の多様化に貢献できたありようだったのです。
 でも、近年は大量生産・大量消費・大量廃棄により、自然界で分解できない人工物が、この過大な環境負荷を一層際だたせています。
 そこで、私たち人間が創り出した社会を自然界の持続可能な生態系に調和させるために、持続性をもたらす「循環」を基本に、見直してみたいと思います。ニセコ町は、河川や地下水などの水環境に恵まれていますし、地域社会もこの水環境に依存して成り立っている部分が大きいので、水環境を循環的に捉えて、地域環境を見直します。
 ニセコ町における水循環の様態を簡略なフロー図にまとめてみました。循環の流れをチェックするための指標も設定しています。
水の循環とモニタリング指標

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