教育行政執行施策

1 持続可能な社会実現の推進

(1)SDGs・ESDの推進

 教育は、人が生きるうえでの基盤となるものです。SDGs未来都市や環境モデル都市の取り組みをはじめ、ニセコならではの環境を活かし、子どもから大人まで誰もが質の高い教育を受け、生涯にわたって学びを深める持続可能な社会の創り手を育む教育(ESD)を推進し、持続可能な社会(SDGs)の実現につなげていきます。

2 豊かな心と健やかな体の育成

(1)子育て支援の推進

 子どもたちの笑顔が輝くまちを目指し、第2期ニセコ町子ども・子育て支援事業計画に基づき、子育て支援策を総合的に推進します。また、令和7年度から5年間の計画となる第3期計画の策定作業を進めます。
 地域子育て支援センターでは、未就園の親子を対象とした交流・学習の場の提供や子育てに関する相談・援助のほか、一時保育や休日保育を実施し子育て環境の向上を図ります。
 学童期の児童に対しては、放課後に安全・安心な居場所や発達段階に応じた遊びや生活ができる場として、放課後こども教室やニセコこども館における学童保育事業を実施し、子どもの健全な育成を図ります。
 また、子育ての相互援助活動を行うファミリーサポートセンター事業やNPO法人による長期休暇中の預かり保育活動、子どもの遊び場などを拡充し、地域の力を活用しながら地域全体で子どもを育むまちづくりを進めます。

(2)幼児教育・保育の推進

 乳幼児期は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な時期です。子どもが安心し生活できる場を提供し、成長や発達を支えるとともに、質の高い幼児教育を実現していくことが重要です。そのため、幼児教育と保育の両面を担う幼児センターでは、自然の中での保育・遊びや生活を通して、基本的生活習慣の育成や豊かな心と健やかな体の育成につながる教育・保育に取り組みます。
 また、家庭と連携した絵本の読み聞かせや、外国語指導助手・国際交流員による英語タイムなど、地域との多様な関わりを深めながら保育を進め、幼児期の終わりまでに育って欲しい姿を大切にします。小学校の学びへの円滑な接続、中学校・高校・大学などとの連携や交流を推進し、幼児教育・保育の一層の充実に努めます。
 また、利用者の利便性向上や保育士の業務負担を軽減するため、保育支援システムの拡充など、DX化の推進を進めます。

(3)体力・運動能力の向上

 子どもが健やかな生活を送ることができるよう、家庭と連携し、基本的な生活習慣づくりを進めるとともに、全国体力・運動能力調査などの結果を活用し、幼児センター・学校での体力づくりの充実や運動習慣の定着に努めます。

(4)健康教育・食育の充実

 学校給食については、安全で安心、安定した運営のため、衛生管理の徹底のほか、調理機械や設備の適切な維持管理や点検・修繕の実施、調理機械などの計画的な更新を進めます。
 また、地元をはじめとする道産・国産の食材の活用により、さまざまな食に触れることができるよう努めるとともに、学校給食を通じて望ましい食習慣や食文化、食を通した健康への関心を育てる食育指導を進めます。
 アレルギー対応については、保護者や児童生徒、学校と連携し、個別に対応していきます。学校給食費については、食材費が値上がりの傾向にありますが、本年度も公費負担により学校給食費一食当たり単価の据置きを継続するほか、学校給食費の免除の対象をこれまでの第3子以降から第2子以降に拡大し、さらなる保護者負担の軽減を図ります。

(5)人権・道徳教育の推進

 本町は国内外からの移住者も多く、文化や社会的背景が異なる多様な子どもが就園・就学しています。有島武郎が遺した相互扶助理念の定着のほか、平和で民主的な社会の実現や互いの人権、多様性を尊重し思いやる心を育む道徳教育を家庭や地域と一体となって進めていきます。
 また、子どもの権利条約に基づく子どもの人権を最大限に尊重し、豊かな心や人間性の育成に努めるほか、まちづくり基本条例第11条(満20歳未満の町民のまちづくりに参加する権利)に基づく子どものまちづくりへの参加を進めます。

3 確かな学力の育成

(1)新しい時代に必要となる資質・能力の育成

 小中学校では、学力向上に向けた教育活動の検証と改善に教職員が一体となって組織的に取り組みます。また、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進め、新しい時代に必要となる資質・能力を育成します。
 ニセコ高校では、生徒が自ら解決すべき課題を見いだし、主体的に考え、多様な立場を理解し、納得解を生み出すことなど、新学習指導要領が目指す資質・能力を確実に育成する教育活動を実践します。

(2)特別支援教育の推進

 子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援を行うため、幼児期を含め、早期からの教育相談や就学相談を行います。特別な配慮が必要な児童生徒に対しては、通級指導(ことばと学びの教室)や特別支援学級での学びのほか、小中学校に特別支援講師を配置し、日常生活や学習面の支援を行うなど、特別支援教育の充実に努めます。

(3)STEAM教育の推進

 総合的な学習の時間における教科など横断的な学習や探究的な学習を実践し、異なる分野の知識を統合して創造的に問題を解決する能力を育みます。ニセコ高校では、ICTを活用した文理横断的で探究的な学びを強化し、高大連携による国際教育や起業家教育を通して、複雑化する地域課題を解決できる資質・能力の育成に取り組みます。
※ STEAM教育:各教科での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科横断的な教育(Science、Technology、Engineering、Arts、Mathematics の頭文字)

(4)キャリア教育の充実

 児童生徒が社会的・職業的自立に向けた資質・能力を身に付けていくことができるよう、学校におけるキャリア教育の充実を図ります。
 ニセコ高校においては、自分の幸福な未来(Well-being)の実現に向けたキャリア教育により、大学進学をはじめ生徒一人ひとりの多様な進路希望の実現を図ります。

4  ふるさと多文化共生の推進

(1)ニセコスタイルの教育の推進

 「ニセコスタイルの教育」は、小学校から中学校までの9年間の連続性のある教育に加え、幼児センターやニセコ高校との連続性も考慮し「4校種を連続した一つの学園体」と捉えた、ニセコで学び、ニセコを愛する子どもを育てる取り組みです。事務局に新設配置する教育専門官が中心となり、重点項目である英語教育、ふるさと学習、ICTの活用を中心に取り組みを進め、各学校が一体感のある教育活動を展開することにより、ニセコスタイルの教育のさらなる推進に取り組みます。

(2)国内外交流・国際理解の推進

 ニセコ高校に設置するNISEKO World Village(仮称)を拠点として、ニセコ町国際交流推進協議会(ニセコフレンズ)や北海道インターナショナルスクールニセコ校と連携・交流などを行いながら、高校生のほか小中学生や町民のみなさんも参加できる多文化共生の社会づくりの取り組みを進めます。
 また、子どもたちが異なる文化に触れ、視野を広げる機会として、滋賀県高島市(旧マキノ町)への訪問「少年洋上セミナー」や鹿児島県薩摩川内市の児童生徒受入れなどの少年交流事業を実施します。

(3)ニセコ高校の振興

 ニセコ高校では、シビックプライドを持ったグローバル人材の育成に向けて、起業家教育と国際教育を特色とする新しい学校づくりを進めます。総合学科の特色を生かした具体的なカリキュラム検討を進めるとともに、起業家教育ではデジタル技術などを活用した探究活動を進め、放課後起業クラブ(仮称)など学習成果を活用し、挑戦する機会を創出します。国際教育では、4年生の生徒が行う海外研修や短期海外留学などの費用を支援するほか、生徒が日常的に英語や海外の文化に触れ、楽しみながら国際感覚を身に付けることができるNISEKO World Village(仮称)の活動を推進し、グローバル社会を生き抜くために必要な国際性や英語力を育みます。
 合わせて、全日制への転換や学校規模の見直しを検討するとともに、道内外遠方からの生徒募集にあたり、安心して生徒が通うことができる環境を整備することが重要であることから、老朽化した高校寮「希望ヶ丘寮」の早急な再整備に向けてさらに検討を進めます。

5  学びの質を高める環境の確立

(1)ICTの活用推進

 学校のICT活用をさらに進めるため、ハード・ソフト・人材を一体とした環境整備を進めます。環境の充実、ICT支援員の配置、教職員のICTを活用した授業力の向上などのほか、小学校から高校まですべての児童生徒が利用できる学習支援ソフトを導入し、学びの充実や家庭学習での活用を進め、教育の質を向上させます。

(2)教育相談・生徒指導支援の推進

 いじめや不登校、ネットトラブルへの対応、新型コロナウイルス感染症の影響による差別・偏見の防止への対応など、児童生徒を取り巻く社会の変化に応じた対応が求められています。また、いじめ防止基本方針に基づく早期発見と、未然防止に努めるほか、児童生徒の主体的な活動を大切にし、ルールなどを自らが考え実行できる教育環境づくりに努めます。
 これらの課題解決の一助とするべく、スクールカウンセラーを配置し、児童生徒や保護者との相談を充実します。

(3)教職員の研修機会の充実

 より質の高い教育を継続的に提供し、子どもたちの可能性を最大限に伸長させることができるよう、教員が強い使命感や豊かな社会性、実践的な指導力など資質能力を十分に備えるために、町内の教職員が参画するニセコスタイルの教育研究会の活動を支援します。
 「ニセコスタイルの教育の日」を設定し、町内全校種の教職員が一堂に集まり研修を行うほか、専門性を有する研修を行うなど、研修の個別最適化や教員同士の協働的な学びの充実を図ります。

(4)働き方改革の推進

 各学校の教育目標の実現に向けて、限られた人的・物的資源を効果的に活用しながら、教職員が真に必要な教育活動に注力するため、学校における働き方改革を推進します。また、教育現場のDX化をさらに進め、教職員が持てる力を存分に発揮できる職場環境を整備します。

(5)学びのセーフティネットの構築

 子どもが生まれ育った環境によって学習機会が左右されることのないよう、必要な支援を行い、全ての子どもが安心して就学できる環境づくりが大切です。就学援助制度により、学用品費や学校給食費など経済的支援を引き続き行います。
 さらに、帰国子女を含め日本語ができない児童生徒に教職員や支援員の配置を行い、子どもの就学機会を提供するほか、学校生活への適応を図るとともに、適切な指導を行います。

(6)教育環境整備(学校の暑さ対策)

 熱中症の危険もある猛暑が続くことが予想されていることから、エアコン設置による学習環境の改善に取り組みます。令和5年度に整備を完了した幼児センターに続き、各小中高校へも早期に設置が完了できるよう準備を進めていきます。
 また、建築後30年以上が経過しているニセコ高校校舎の劣化状況の調査を行い、再整備に向けた基本方針を策定するほか、幼児センター屋根の防水改修工事、ニセコ中学校体育館照明のLED化など、施設の適正な維持管理に努めてまいります。

6  地域と学校の連携の充実

(1)コミュニティ・スクールの推進

 学校と家庭、地域が課題や目標を共有し、地域とともにある学校づくりを目指すコミュニティ・スクールの活動を引き続き展開します。本町の自然環境や人材、まちづくりの取り組みなど、豊富な教育資源を用いながら、個性豊かでニセコを愛し、ニセコに誇りを持つ子どもを育む教育の充実に取り組みます。

(2)学校危機管理体制の強化

 自然災害の少ない本町ですが、全国的に大規模な災害などの発生やその後の影響なども課題となっていることから、学校と教育委員会、警察などの関係機関との連携を一層強化し、ニセコ町通学路安全推進会議による通学路の安全点検や交通安全教育、防犯教育、防災教育を一層強化します。
 スクールバスの運行については、安全第一の運行に努めるほか、効率的なルート設定や登下校時間に合わせた時刻の見直しを行い、児童生徒の通学手段を確保します。

7  生涯学習・スポーツの充実

(1)生涯学習機会の充実

 生涯にわたって、いつでも、どこでも学ぶことができるよう、多様な学習機会の提供やリカレント教育の推進に取り組みます。
 第7期社会教育中期計画に基づき、学校・家庭・地域との連携を強化し、「子育て支援体制の充実」「多文化交流機会の充実」「地域を知る機会の充実」「高齢者の健康」の4項目を柱とする社会教育事業を引き続き推進します。
 子どもの学習機会では、本町の人材・もの・自然などのさまざまな教育資源に触れ、発見や感動を通してふるさとの良さを知るとともに、将来に向けてたくましく生きる心・体を育むことを目的としたニセコみらいラボを実施します。
 高齢者の学習機会では、寿大学での学習や交流などを通して、知識と教養を高め、健康で明るく文化的な生活を送るための取り組みを行います。

(2)生涯スポーツ活動の推進

 ウインタースポーツをより身近に親しむため、幼児用スキーの貸出事業やこどもスキーフェスティバル兼全町児童生徒スキー大会の開催、各種スキー教室を行います。さらに、町内各スキー場の協力を得て、子どものスキーリフト券の助成事業や、4歳以上の幼児および小学校低学年児童の保護者が購入するスキーリフト券への助成事業も継続して行います。
 健康増進と親睦を目的として定着しているふれあい町民運動会や各種スポーツ大会、スポーツ推進委員が中心となり企画をしているスポーツの体験教室や夏休み期間中の町民ラジオ体操会を継続して開催するほか、競技力振興のため、スポーツ団体が主催する町長杯スポーツ大会、ニセコマラソンフェスティバルの開催を支援します。
 町の少年スポーツ、健康スポーツ、競技スポーツの各分野で中心的な役割を担うニセコ町体育協会に対しては、所属団体の活動への支援を行い、地域に根ざしたスポーツ活動の推進や指導者の育成・確保に努めます。
 また、学校で行われている部活動を持続可能なものとするため、ニセコ町休日部活動の地域移行検討協議会において、部活動の段階的な地域移行に向けた具体的な方策を検討していきます。

(3)生涯学習・スポーツ施設の充実

 所管する各施設においては、安全かつ快適に、誰もが利用しやすい生涯学習・文化・スポーツ施設とするため、長期的な展望と整備計画を踏まえた適切な維持管理に努めます。老朽化が課題となっている有島記念館においては、有島記念公園など周辺環境の維持を基本としながら、その活用と改修について引き続き検討を進めます。
 

8  文化・芸術の振興

(1)芸術文化活動の推進

 文化・芸術は心豊かな社会の形成に寄与することから、関係団体と役割を分担・連携しながら、文化協会主催による町民向けコンサート、児童生徒を対象とした青少年芸術鑑賞会や児童生徒作品展を開催します。また、町民センターや学習交流センター「あそぶっく」、有島記念館などの施設を活用し、音楽鑑賞など芸術に触れる機会の確保に努めます。
 ニセコ駅隣接地のニセコ鉄道遺産群においては、ニセコ町鉄道文化協会との連携のもと、鉄道車両を公開するイベントの開催および認知度を町内外に広める広報活動の強化やオリジナル商品の販売などを行います。また、施設の安全管理ならびに環境整備にも十分配慮します。
 このほか、郷土資料については、貴重な歴史的文化財の収集・展示事業に加えて、保管設備の設置や資料のデジタル化などを進め、有島記念館の郷土資料館としての機能充実に取り組みます。

(2)読書活動の推進

 NPO法人あそぶっくの会を指定管理者として、学習交流センター「あそぶっく」を運営し、図書館として日常的に楽しく身近に読書ができる環境を提供するほか、読書に関するボランティア活動を支援します。
 また、第3次子どもの読書活動推進計画(令和5年度~令和9年度)に基づき、学校を通じた児童生徒の読書活動を推進するため、あそぶっくの会の協力による学校図書の支援活動を実施し、図書室の環境整備や有効活用、選書の充実にも取り組みます。

(3)有島記念館の充実

 有島記念館は、大正期を代表する作家・有島武郎の文学、農場解放などの業績を紹介・伝承する施設です。学芸レベルを一層向上させ、事業の企画立案・実行の迅速化に取り組みます。また、文学、郷土史、美術に関する企画展のほか、教育普及事業の開催、さらに姉妹・友好提携館などと連携して関連事業の一層の充実に努めます。
 本年度は、貼り絵作家・藤倉英幸氏の企画展を引き続き開催するほか、北海道ゆかりの演出家「守分寿男展」、全国規模のデザイン展「竹尾ペーパーショウ」などの特別展やこのほど更新したグランドピアノのこけら落としコンサートを開催します。






 令和6年度においても、教育委員会運営の一層の充実を図りながら、教育を取り巻く諸課題に積極的に対処していく所存です。

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ニセコ町役場
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