重点政策の展開

重点となる6分野の政策展開について説明します。

1 守りの経済から攻めの経済へ

 地域経済の活性化を図るため、本町の豊かな自然環境を生かした産業の育成に努め、農業・観光業・商工業の連携と地域に賦存するエネルギーの利用を始めとする経済の域内循環による内発的経済の振興、本町のまちづくりの理念を共有できる事業所の誘致および創設支援など、新たな雇用の場の拡充に努めます。
 

(1)農業と酪農の振興

 一昨年のTPP11および日EU・EPA、昨年の米国との二国間貿易協定が発効され、日本の農業の行く末が大変憂慮される情勢となっています。一方、地球温暖化による気象の変化や、日本で自然災害が頻発している状況、さらに本町を取り巻く地域における降水量の減少など、気候変動は、営農環境に少しずつ影響を及ぼす事態となっており、これら変動する気象状況への対応も喫緊の課題として取り組む必要が生じています。

 こうした日本の農業全体が諸外国との貿易や気象条件などに翻弄される事態であることから、今後、農業経営体の体質改善だけではなく、環境に適した農業への転換や経営強化への取り組みが必要と考えています。
 国は「総合的なTPP関連政策大綱」において、「輸出促進によるグローバル大国」、「国内産業の競争力強化」、「農政新時代」という三つの柱を立て、農産物の輸出促進、TPPなどを通じた国内産業の競争力強化、体質強化対策などの取り組みを進めようとしています。

 ニセコ町おいても、国の制度を活用しつつ、農業の経営環境の整備や経営の体質強化など、本町の農業の特徴である農産物の多品目生産性を活かし、かつ一大消費地でもある観光リゾート地としての強みを活かした農業経営の確立を目指して支援していく所存です。
 さらに、輪作体系の確立と、天候不順などの経営リスクが分散できるような計画的な営農も重要であり、関係機関と協力しながら、将来に向けてニセコ町に適した農業生産のあり方を模索していきたいと考えています。

 一方で、農業分野での人材不足が顕著となっており、それに伴う賃金の上昇、そして、人材育成や人材確保、農作業軽減効率化のための大型機械の導入などの対策が必要となっており、出入国管理法の改正に伴う農業分野への外国人労働者の受け入れなども含め、北海道や関係団体と連携しながら協議をしていきたいと考えています。

 令和2年度においては、現在進められている国営緊急農地再編整備事業を核として、ニセコ町の農業基盤の整備とともに、引き続き優良農地の保全に努め、環境に調和し、安全で安心な「クリーン農業」の推進、農地の利用集積や収益性の高い営農の促進、担い手育成対策など、農家所得のさらなる向上への取り組みを進めていきます。

 また、イエスクリーン米栽培支援制度の継続と、完熟堆肥助成や緑肥作物の奨励、土づくり対策、観光と連携した地場産品の地域ブランド化対策、6次産業化支援、新たな栽培技術の導入支援などを引き続き行います。
 
 

(2)観光の振興

 令和元年度は、日韓関係の悪化に伴う日本への旅行の自粛や12月に中国で発生した新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)による海外渡航者の減少、さらには国内での感染拡大傾向の影響もあり、多くの宿泊キャンセルなどが発生し、宿泊関係者を含む観光関係事業者に大きな被害が発生しました。
 日本政府観光局の統計によると2019年(令和元年)の訪日外国人客数は3,188万人を越えており、今後の目標値として2020年(令和2年)には4,000万人、2030年(令和12年)には6,000万人としていますが、国内外の情勢や新型コロナウイルスの収束状況によっては、訪日外国人観光客の減少や国内の旅行の手控えなど、全国の観光地に深刻な影響が出ることが心配されています。

 本町においても、その影響が大変懸念されるところではありますが、観光地として国内外のみなさんに的確な情報を提供しつつ、関係機関と連携し、各事業所の安全対策への取り組みへの支援を積極的に実施してまいります。
ニセコ町における入込客数については、ここ数年横ばい傾向にあり、2018年度(H30年度)の総数は167万人、延べ宿泊数は50万人泊。うち訪日外客数は13万人、延べ宿泊数は21万人泊です。

 本年は、国際リゾート地としての観光振興やSDGs未来都市として観光分野での対応の強化、観光地としての環境対策をさらに推進するための財源確保として、宿泊税の導入へ向けた取り組みを進めます。宿泊税については、特に、国際的な視点に立った観光地としての成長が必要なニセコエリアにおいて必要不可欠なものと認識しており、宿泊税の導入とあわせて「観光振興ビジョン」の策定にも取り組みます。

 また、倶知安町、蘭越町と共に広域で取り組んでいる「ニセコ観光圏」については、第2期目となる計画が昨年度よりスタートしました。当初計画においては、人材育成やプロモーションなどエリア連携を中心に推進することができましたが、2期目も引き続き人材の活用や育成を行いつつ、地域内交通の充実、エリア内事業の推進体制の強化、温泉地の活用などの課題を解決していくため、3町の連携の下、DMC(Destination Management Company:デスティネーション・マネージメント・カンパニー)やDMO(Destination Management Organization:デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)機能の拡充に取り組んでいきます。

 令和2年度においては、本町の重要な観光資源である温泉の活用(環境省では、新湯治を推進)や、自転車を利用した夏季の魅力アップについても、ニセコ山系観光連絡協議会や羊蹄山麓町村長会などと連携しながら取り組みます。また、ニセコリゾート観光協会が実施する観光振興事業への支援やニセコハロウィンなどのイベントへの支援を継続します。加えて、スノーリゾートの推進においては、冬山での安全対策の要である「ニセコルール」の運用を各スキー場や「国立防災科学技術研究所」、倶知安町をはじめとする関係機関と協力して支援していきます。

 道の駅ニセコビュープラザの改修について、本年度より本格的に検討を進めるとともに、五色温泉インフォメーションセンターなどの観光関連施設の運営充実に努めます。
 

(3)商工業の振興と労働対策

 近年、事業所の増加に伴い、働き手の不足や住宅の不足が引き続き顕著となっており、住宅不足解消への取り組みや、U・Iターンなどの移住促進を国などの関係機関と連携しながら進めます。
 また、商工会、国や大学・金融機関などと連携した「ビジネスセミナー」の開催や起業相談窓口の運用などの小規模起業を継続して支援するため、「小規模企業振興基本条例」(仮称)の制定を目指します。あわせて、多様な事業者の育成や企業誘致活動の促進、地域内で不足するサービスの確保、域内循環経済の拡充を目指します。

 加えて、ニセコ町商工会が実施する「まちゼミ」を支援するとともに、綺羅カード会が実施する「キッズカード事業」への支援を継続し、地域内の消費拡大に取り組んでいきます。さらに、引き続き「ようてい地域消費生活相談窓口」を設置して、不当な勧誘などによって町民のみなさんが苦しむことがないよう、専門性の高い相談員による対応を実施していきます。
 

2 誰もが健やかに笑顔で暮らせるまちづくり

 本町で生活をしているみなさんが、相互に助けあい、健康で心豊かに生活できる社会を創るため、保健、医療、福祉の課題を総合的に勘案しながら、少しでも安心して暮らすことができるよう取り組みます。
 
 

(1)子育て支援

 本年度の子育て環境の整備においては、本年度からの5年間を計画期間とする「第2期子ども・子育て支援事業計画」に基づき、次代を担う子どもたちと子育て家庭が、安心して子育てができる環境づくりに努めてまいります。
本年度は、以前から要望のあった子どもの休日預かりに対応するため、ゴールデンウイークと年末年始の長期休日に民間の団体と協力し、町の委託事業として「長期休日子ども預かり事業」を実施します。

 また、平成30年10月に公益財団法人日本ユニセフ協会から委嘱を受けている「子どもにやさしいまちづくり事業」検証町村として、町政への子どもの参画などチェックリストによる検証を導入し、子育て環境の改善につなげていきます。
 さらに、昨年設立され本町も加盟している「子どもの未来を応援する首長連合」から、国に対して子育て支援や子どもの貧困対策に係る制度の創設の提言を行うとともに、現行制度の活用にも努めていきます。
 子どもの健やかな成長を願い実施してきた「18歳までの子ども医療費の無料化」を継続するとともに、「子どもの遊び場」、特に冬の遊び場の整備などについて、関係者と検討を進めます。

 平成28年4月に開設した「ニセコこども館」は、多くの子どもに利用されており、本年度も小学3年生までの児童68人の受け入れを予定しています。また、小学4年生以上の受け入れについては、指導員の増員やこども館施設の整備など受け入れ体制が整い次第、実施します。

 健康診断では、新生児の聴覚異常の早期発見、早期治療につなげる「新生児聴覚検査」の助成を昨年に引き続き実施するほか、妊婦や乳幼児の健康診査、新生児訪問指導や保健指導などの母子保健の充実に努めるとともに、不妊・不育症治療の助成および産婦人科医師の確保対策を継続します。

 また、おたふくかぜおよびインフルエンザの任意予防接種の全額公費負担、5歳児健診の継続など、子どもの健康づくりの推進と保護者の経済的な負担の軽減および、未熟児や障がい児の医療費給付事業などを継続して実施します。

(2)高齢者、障がい者の福祉

 高齢者や身体に障がいをお持ちのみなさんが、住み慣れた地域で安心して暮らすことができるよう平成30年度から3年間を計画期間とし策定された「後志広域連合第7期介護保険事業計画」や「第7期ニセコ町高齢者保健福祉計画」に基づき、安心できる高齢者福祉の充実をこれまで図ってまいりました。この事業計画は本年度が最終年となるため、新たに令和3年度から3年間の事業計画を策定します。今年度は、各種情報などの整理や分析を行い、関係会議で協議を進めていきます。

 ニセコ福祉会が運営する特別養護老人ホーム「ニセコハイツ」および「デイサービスセンター」では、施設や設備の老朽化が進んでおり、本年度はニセコハイツのベットマットとデイサービスセンターの入浴装置(スロープ)の更新を支援します。また、認知症の高齢者が安心して暮らせる場として開所している「グループホーム・きら里」への支援ならびに、介護サービス計画(ケアプラン)の作成を行う「居宅介護支援事業所」へ運営費などの一部補助を継続します。

 介護予防の中心的な役割を担う「地域包括支援センター」においては、関係機関と連携を図りながら課題を抱える高齢者への支援を行うとともに、健康維持のための予防事業を実施します。また本町では、近年増加する認知症患者の対応として「認知症初期集中支援チーム」を設置しており、認知症専門医の指導のもと、認知症の方やその家族のみなさんへ初期の支援を包括的、集中的に行い、「認知症初期集中支援事業」として自立生活のサポートを継続して行います。

 地域活動支援センター「ニセコ生活の家」では、組織関係者の高齢化が進んでおり、障がいをお持ちのみなさんからの需要に対して、対応が困難な状況となりつつあります。本施設は、障がいをお持ちのみなさんの日中活動が困難な方をサポートするための中核的な役割を担う施設であり、地域の支えやコミュニティーによる「地域生活支援事業」が円滑に進むよう、福祉関係機関との連携や調整を行うとともに、従事するみなさんの労働環境改善および施設運営の一部について継続して支援をします。

 また、「第3次障がい者基本計画」、「第5期障がい福祉計画」に基づき、地域福祉活動を進めるため、福祉関係団体との連携強化や相談支援、地域生活支援事業の充実に努めてまいりました。この事業計画も本年度が最終年となり、新たに令和3年度から3年間の計画策定について、本年度から取り組みを進めます。
 高齢者福祉の向上や、サービスの提供を行っている社会福祉協議会では、成年後見に係る「生活サポートセンター」を開設し、増加傾向にある認知症の方の成年後見相談業務を実施しています。町では後見業務を適切に行うため「市民後見人」の養成活動に対し支援を行います。

 一定の障がいのある65歳以上の方と75歳以上の方の特定健康診査の無料化を継続するほか、介護保険制度などに基づく住宅改修費助成の上乗せ助成、重度障がい者の方へのタクシー利用扶助、除雪支援事業なども継続して実施します。
 

(3)健康づくり

 本町では「第2次健康づくり計画」に沿って、生活形態の変化や高齢化、日常の食生活や運動といった、生活習慣に起因する病気の予防に向けて事業を実施してきました。

 本年度は、これまで行ってきた予防接種を引き続き実施するほか、成人男性の「風しん予防接種」についても対応して行きます。また、町民の予防接種記録や各種健診の受診記録を新たな台帳システムで管理し、健康づくりの推進と事務の効率化を図ります。

 生活習慣病予防の観点から、「健康な食習慣で病気知らず」を目標に、健康的な食習慣を身につける「栄養料理教室」や、保護者から開催の要望が多い「離乳食教室」を開催します。また、日頃より生活習慣病予防の指導や、各種検診事業の実施・検診受診率の向上、健康運動教室の開催など、がんやメタボリック症候群予防対策などの健康づくりに取り組んでいきます。

 喜茂別町、積丹町、島牧村、ニセコ町が連携し実施している「4町村健康支援事業」について、本年度も合同講演会や体力測定を実施しますが、その内容については、見直しを行う予定です。
このほか、町民のみなさんのご協力を得て実施している「エキノコックス駆除対策」を継続して実施します。
 

(4)国民健康保険事業、医療制度

 本町では、健康づくりや各種健診への受診、健康相談や訪問指導などを細やかに実施し医療費の抑制に努めていますが、高度医療などにより医療費は増加傾向にあります。また、75歳以上の後期高齢者の医療費についても同様の傾向にあります。

 平成30年度から国民健康保険事業は、北海道・後志広域連合・ニセコ町の三者による運営が始まっています。また、全道の医療費推計などを基に、北海道がニセコ町で必要とされる国民健康保険税の額を示し、その額への整合性も検討しながら町では「保険税率」を決定しています。本年度は、北海道への納付金額が前年度より増えたことや国保被保険者の所得が落ち込んでいるなどの影響と、将来の北海道による保険税の統合も視野に入れ、税率の引き上げを行う予定としていますので、ご理解を賜りますようお願いいたします。

 そのほかでは、各種保健事業の実施、国民健康保険加入者の簡易1日人間ドック、倶知安厚生病院での人間ドック受診勧奨や広域連合でのレセプト点検、ジェネリック医薬品を利用した場合の差額通知の実施、健康診断未受診者への受診勧誘通知などを引き続き実施し、医療費支出の抑制と適正化に努めてまいります。

 なお、現在健康診断の受診率に応じて、国からの交付金が減額される仕組みとなっており、健康維持、早期発見早期治療の観点からも、国民健康保険に加入されているみなさんにあっては、極力、町が実施する健康診断を受診くださいますようお願いいたします。この受診率の向上が、今後の国民保険税の値上げ抑制につながることをご理解いただきたくお願い申し上げます。
 

(5)地域医療の確保

 地域医療の中核を担う倶知安厚生病院は、医師や看護師のみなさんのご尽力によって少しずつ経営改善の効果が計られてきています。しかし、外国人にかかる受診料の割り増しが、農林水産省の指針により厚生病院ではできないことになっていることが課題です。この農林水産省の指針解消によっては、病院経営が好転する可能性も高く、関係町村での国に対する指針変更の要請活動を行っていきたいと考えています。

 また、地域医療や救急医療の確保、医師の労働環境改善のため羊蹄山麓町村での「夜間急病センター」の取り組みを進め、病院所在地である倶知安町を中心とした近隣町村とともに、運営費の不足額に対して支援します。
 また、倶知安厚生病院旧棟の改築については、令和3年度から工事を予定しており、その費用については「倶知安厚生病院医療機能検討協議会」において、山麓および関係町村で負担することで決定しているところであり、今後はそれぞれの町村が負担する額、負担町村の範囲の調整と国や道への財政支援を要請し、負担額を決定することとなっています。

 ニセコ医院の医療設備について、平成25年度に導入したCTおよびX線装置に係る保守点検費用の一部を本年度から支援していきます。
 

3 環境に優しいニセコの創造

 豊かな自然や景観が、私たちの暮らしと経済基盤を支える本町にとって、自然と調和した、持続可能な社会を築くことが、本町の価値をさらに高め、自律したまちづくりにつながっていくものと考えています。また同時に、世界規模での気候変動が生じており、地球温暖化対策は急務の課題となっています。
 本町は、農業と観光を主産業とするリゾート地として、脱炭素社会を目指す世界の先駆地となるべく気概をもち、温室効果ガス削減と経済活性化の両立を目指してまいります。
 そのために、エネルギーや地域経済の内部循環率を高め、環境・経済・社会が相乗効果を生む、「SDGs」の視点を基本として、「環境モデル都市第2次アクションプラン」を強力に推進します。
 
 

(1)自然環境の保全と環境対策

 ニセコ町の美しい景観は、先人のみなさんのご労苦によって築かれた貴重な財産です。この自然環境と調和した生活を維持するため、環境基本条例、第2次環境基本計画、地球温暖化対策実行計画などに基づき、「環境創造都市ニセコ」の実現に向けた取り組みを進めます。

 ニセコアンヌプリ山麓周辺をはじめとする地域では、数件の観光施設などの建設が計画されています。これら開発がまちづくりに資するものであり、かつ環境と調和したものとなるよう、国定公園法や準都市計画、景観条例、地下水保全条例などの制度を運用し、「秩序ある開発」への誘導を図っていきます。

 廃棄物処理対策について羊蹄山麓7町村では、可燃ごみの固形燃料化処理を倶知安町の民間事業者へ業務委託をしています。本町では、観光客の増加に伴って、ごみ量も増加傾向にあることから、ごみの減量化と分別排出の徹底を図るため、「ごみ分別アプリサービス」を開始します。また、使用済小型家電についても日を指定して収集します。
ニセコ斎場については、国道から奥まった場所にあることから、国道沿いに案内看板を設置します。また、市街地から離れていて近隣に民家もないことから、施設の安全管理を図るため委託による機械警備を導入します。

 し尿処理については、引き続き羊蹄山麓環境衛生組合により羊蹄衛生センターを運営しますが、今後の新施設の整備に向けて関係6町村で検討を加速させることとしています。
 

(2)自立型省資源社会への転換

 「環境モデル都市」として、豊富な地域資源を最大限に活用した循環型地域社会を創造するため、町民みなさんと一丸となって「地球温暖化対策」を推進します。
 本年度は、期間を5年間とする環境モデル都市第2次アクションプランの実施2年度目となります。各分野、広範囲にわたる実施計画であり、町民のみなさんや各事業所、関係機関との連携を図り、環境・経済・社会に相乗効果を生む取り組みを進めます。

 具体的には、建物の低炭素化や再生可能エネルギー設備の適切な導入、自転車の利用などを促進する条例の検討、SDGsの理念に即した街区整備である「NISEKO生活・モデル地区構築事業」の実施設計、あわせて街区の整備・管理や再生可能エネルギーによる電力の供給などを行う「まちづくり会社」の設立など、幅広い分野で温室効果ガスの排出削減と豊かな生活を両立する省資源社会を目指します。
 

(3)林業の振興

 林業は、ニセコ町森林計画やその他の森林振興施策との調整を図り、地球温暖化防止や国土保全、水源涵養など森林の持つ多面的機能が持続的に発揮されるよう取り組みを進めます。
 国や町独自の補助制度を活用し、民有林の整備促進と町有林の除間伐などの適正管理を進めます。また、森林環境譲与税の導入を機会に、小規模であっても域内の木材を活用する方策、本町における木材加工・調達の仕組みや可能性についての調査・検討を引き続き行います。また、最終的には、木材に留まらず、資源の循環を目指す観点からさまざまな流通の域内調達率向上に向けた調査をあわせて実施し、これらが地域ポイント制度として運用できるかの可能性についても検討します。
 

4 豊かな心と個性ある文化を育む

 教育委員会や関係機関との連携を密にしながら、子どもが健やかに成長できる教育環境づくりと多様な文化活動やスポーツ活動の振興に努めます。

(1)教育環境の充実

 教育については、「第5次町総合計画」や「ニセコ町教育大綱」、「町教育振興基本計画(後期施策)」に沿って、教育委員会が取り組む事業を支援していきます。
 

(2)文化とスポーツの振興

 誰もが気軽に文化活動への参加やスポーツに親しむことができるよう、令和2年度からスタートする「第7期社会教育中期計画」に沿って、社会教育、社会体育の諸事業を支援していきます。また、「冬季北海道札幌オリンピック・パラリンピック」招致活動については、引き続き北海道ならびに札幌市の要請に基づいて協力をしていきます。
 

(3)コミュニティー活動と国際交流の推進

 コミュニティー活動の中核施設である町民センターや中央倉庫群の利便性の向上に努めるとともに、コンベンション機能が発揮されるよう取り組みます。特に中央倉庫群においては、町外へのPRのみならず、町民のみなさん、とりわけ子どもや子育て世代の利用を促進する取り組みを進め、多くのみなさんが気軽に懇談ができ、安らげる「居場所」として愛される施設となるよう環境整備を進めます。

 集落再編により整備した地域コミュニティセンターについては、2018年(平成30年)から指定管理者の施設維持経費の負担軽減策を講じていますが、本年度も民間企業の協力により、電気料などの負担の軽減を継続します。
また、西富周辺地区におけるコミュニティー活動や防災時の拠点である西富地区町民センターについては、建物の工事が完了し、今年度は外構工事を実施します。

 本町の国際交流については、国際交流員(CIR)の活躍により、気軽で楽しい交流が数多く行われています。本年度も、一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR)の支援を受け、国際交流員を継続配置するとともに、多文化共生に向けた理解の促進と、各種の国際交流活動を支援します。
 
 

5 安全で安心な暮らしを支える

 町民みなさんや来町されるみなさんが、安全で安心な生活環境のもとで暮らし、過ごすことができるよう、防災対策の充実強化、生活基盤や社会基盤の総合的な整備に引き続き取り組みます。
 

(1)防災・救命対策の強化

 近年、我が国は自然災害が頻発し、全国各地で毎年甚大な被害が発生しています。本町では、昨年度から進めている防災資機材などの整備を今年度も進めるとともに、地域防災組織の立ち上げを昨年度に引き続き、拡大・充実できるよう進めます。

 また、「地域防災計画」ならびに昨年策定した「国土強靭化地域計画」に基づき、町民の生命と財産を守るための「防災・減災・国土強靭化」対策に引き続き取り組みます。災害発生時に迅速かつ的確な行動をとることができるよう防災訓練の実施ならびに研修会などの参加により、職員の災害に対する実務能力を高めるとともに、町民に対する防災情報の周知・広報活動の工夫に努め、自治会などとの連携を図り、地域に根差した防災活動のための基盤づくりを進めます。

 原子力防災対策については、国や北海道および関係自治体などと緊密に連携し、「地域防災計画(原子力防災計画編)」に基づき、原子力防災対策について、引き続き周知・啓発を行います。
また、本町の地域防災対策の拠点となる「役場新庁舎」ならびに「防災センター」については、「役場新庁舎建設実施設計」に基づき、昨年度1期工事を終え、本年度に2期工事となる地下1階、地上3階建ての新庁舎完成に向けての工事を実施します。

 消防業務については、羊蹄山ろく消防組合と連携を取り、救急業務の要である職員の技能向上を目指し、本年も消防学校への研修に派遣することとしています。
 

(2)情報基盤の充実

 一昨年、全道で起きたブラックアウトの際にも、防災通信としてコミュニティFM「ラジオニセコ」が、逐次最新の情報を放送し続けるなど、大変大きな役割を果たしてくれました。昨年行ったラジオニセコの聴取率調査では、48.7%と約半数のみなさんがラジオニセコを聞いていいただいていることがわかりました。ラジオニセコについては、行政情報をはじめ、町内の各種団体、観光イベント、ニセコルールにおける雪崩事故防止情報など、町民みなさんや観光客のみなさんへのさまざまな情報発信を行っており、地域にとって欠かせない情報源として、その信頼は年々高まりを見せています。

 また、ラジオ局を通じて新たなコミュニティー活動も生まれ、着実に広がりをみせています。日本では珍しい「ラジオ劇団」が創設され、毎年ラジオ劇を放送し、さらには多くの町民や観光客のみなさんが出演するなど、まちづくりにも大きな成果を上げています。今後のさらなる発展を期するため、新入社員への研修や放送設備更新などに対して継続して支援を行います。

 さらに、町内の光ファイバー網の強化を進めるため、町が保有する光ファイバー通信施設のうち、2003年(平成15年度)から2004年(平成16年度)に工事した「第1期工事分」を今夏にも、第一種放送事業者に移管する予定です。
 

(3)住環境の整備と定住促進

 公営住宅のミスマッチ解消と不足する子育て世帯に対する住宅施策として、新たな団地の整備の検討を進めています。これまで関係機関などで協議してきた内容を踏まえ、本年度は施設整備の内容を具現化するための基本設計を行い、国の定める省エネ基準を上回る公営住宅の建設を進めます。
 そのほか、新有島団地の長寿命化型改善工事を実施するとともに、民間賃貸集合住宅に対する建設費への補助制度を継続します。

 また、本町の人口増加傾向を維持するため、本年度も移住・定住意識が高い都市部を重点化して町のPRを行います。さらに、本町の地域課題の解決と定住人口の増加を図るため、地域おこし協力隊の導入を継続し、自治創生を推進する担い手の確保を図ります。また、地域おこし協力隊の活動拠点として中央倉庫群を活用し、その運営についても引き続き指定管理者へ委託をし、活動の自律性を高めて行きます。
 

(4)道路交通網の整備

 町道は整備後数十年経過している路線が多く、舗装の劣化や防護柵の破損が進んでいます。2018年(平成30年度)に策定した「道路維持管理計画」に基づき、財源となる起債などの活用を図りながら適正な維持管理に努めます。
町道の整備については、新規事業として「駅前西三線通歩道整備」の実施設計、継続事業として「近藤七線通」の改良工事、「羊蹄近藤連絡線」の舗装および歩道の整備を行います。また、「ニセコ湯ノ里線」の法面補修、「曽我停車場線」の擁壁補修、「福井南三線二千年ふるさと橋」の補修工事を行います。
 このほか、道路側溝やガードケーブルなどの補修を進めるとともに、冬期間の除雪について、町民のみなさんの協力を得ながら、冬道の安全確保に努めて行きます。
 

(5)地域交通の確保

 にこっとBUSを含めた町内の交通手段最適化のため、これまでの3年間の調査を踏まえ、昨年度から新たに3年間、交通手段最適化のための調査・実証試験を行っています。本年度は、自家用車を活用した住民相互の相乗りによる助け合い交通システムの実証試験の拡充、デマンドバスの混雑緩和と既存冬季周遊バスを統合した「ニセコウインターシャトル」の運行試験を継続して行います。
 

(6)空き家対策 

 地域の安全と生活環境、良好な景観の保全のため、「ニセコ町空家など対策計画」を2018年(平成30年)3月策定し、これまで、空き家実態調査、物件の所有者へ利活用の意向調査、管理不良の空家に対し、景観条例に基づく指導・助言を行ってきました。今後、増加が予想される別荘空家について、その利活用に向けた仕組みづくりの検討を進めます。
 

(7)上下水道

 水道事業は、本年度から本格的に水道管路施設の更新事業を進め、施設の老朽化対策を進めていきます。また、近年、降水量が減少傾向にあることから、水道水源の補充確保についても検討を進めます。
 下水道事業については、施設の適切な更新と維持管理を行うため、「下水道事業ストックマネジメント計画」の調査を令和元年度から進めており、本年度中に計画を策定します。今後、この計画に基づき、国の補助事業による施設の計画的な更新を進めることとしています。
 

6 未来を見据えた行財政の基盤づくり

 ニセコ町総合計画、国が進める地方創生との連携のもと、本町の第2期自治創生総合戦略に取り組むとともに、SDGs未来都市計画および環境モデル都市第2次アクションプランを基軸に、町が保有する行政財産・資源の有効活用を図り、効率的で効果的な行財政運営に努めます。
 

(1)総合計画によるまちづくりと行財政運営

 12年間の計画期間である「第5次ニセコ町総合計画」は、4年毎の見直しを行っており、昨年度の見直しを受けて今年度から最後の4年間の計画を進めていきます。

 限られた財源の中で効率的かつ効果的に事業を進めていくためには、住民自治の視点から事務事業や財政の見える化を絶えず行い、整理・再構築していく必要があります。今後も引き続き、各種の事務事業の検証を行いながら、長期的な視点に立ち、将来のまちづくりを展望した行財政運営を進めていきます。

 さらに、自主財源の確保も極めて重要な課題であり、新たな「目的税」である宿泊税について、制度設計の熟度を上げ今年度中の条例制定を目指します。しかし、今後とも多くのご意見をいただく中から、具体的な制度設計の熟度をあげていく所存であり、ご協力をお願いいたします。

 ふるさとづくり寄付制度については、「ふるさと住民票」の活用をさらに広く図るとともに、地域にとって有用な事業展開となるよう、節度を持って運用を継続して行きます。
 
 

(2)自治創生の推進

 「まち・ひと・しごと創生法」に基づく人口減少対策として、平成27年度に策定した「自治創生総合戦略」は、想定した人口規模を確保しつつ、この3月に計画を終了します。しかし、日本全体としての人口減少傾向に歯止めがかからないことから、国からは第2期の計画策定が求められ、本町においても令和元年度に町民や関係者のみなさんとの協議を重ね、この3月に「第2期ニセコ町自治創生総合戦略」を策定します。令和2年度からは、さまざまな社会情勢の変化への対応や関係する計画との整合性を踏まえつつ、人口減少対策と地域経済循環の強化に向けた取り組みを進めていきます。
 

(3)計画的な公共施設管理

 各公共施設の維持管理などに関しては、平成28年に策定した「公共施設など総合管理計画」および公営住宅や道路・橋りょう、上下水道などの個別施設計画に基づき、計画的な維持修繕、類似施設の統廃合、長寿命化、施設管理の見直し廃止など、適切なマネジメントの実施に努めます。また、町が保有する資産については、売却や貸付などの有効活用を検討し、町の財政の健全性の保持に努めます。また、「ライフサイクルコスト」を重視した発想への転換を図り、国の諸制度を最大限活用しつつ、将来を見据えた社会基盤の整備を進めていきます。
 あわせて、事務事業における危機管理対策として、事務事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)を策定します。
 

(4)広域行政の推進

 広域行政については、税の滞納整理、国民健康保険、介護保険に関する事務を後志広域連合で行っており、今後も引き続きこれら事務について広域事務を推進します。
 また、羊蹄山ろく消防組合や羊蹄山麓環境衛生組合の共通経費などの負担が毎年増加している現状から、関係町村とも協議しながら本町負担の軽減につながるよう対策を講じて行きます。

 
 以上、令和2年度の町政執行に関する基本的な方針を申し上げましたが、本年度もこれまでと同様、私の基本姿勢である「公正、スピード、思いやり」の行動原則を柱に、次代を担うこどもたちへの投資、子育てしやすい環境の拡充を図り、「1、資源の循環、2、エネルギーの循環、3、地域経済の循環」という、ニセコ町が将来にわたって自律していくための3つの循環による「子どもの笑顔が輝く元気なニセコ」づくりに努めてまいります。
 
 終わりに、町議会ならびに町民のみなさんのご理解とご支援を心からお願い申し上げ、令和2年度の町政執行方針といたします。
 
 なお、事業の詳細については、次ページ以降に添付の「 政策分野別の事業詳細」をご覧いただきますようお願い申し上げます。
 
 

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