守りの経済から攻めの経済へ

1.農業と畜産業の振興(農政関係)

(1)国営緊急農地再編整備事業の推進

 本町農業の生産性の向上を図るには、農用地の区画拡大、勾配修正、用排水路整備等の農業生産基盤の整備が不可欠です。また、さらなる担い手への農地の利用集積や流動化、耕作放棄地の解消が急務となっています。

 5年目を迎えたニセコ地区国営緊急農地再編整備事業では、こうした農業課題を解消するため、区画整理工事による農用地の大区画化や汎用化、水利施設の近代化を進め、農業の生産性の向上を図るとともに、換地手法による農用地の集団化や担い手への利用集積を進めます。

 本事業は国の大型の農業農村整備事業であり、同事業の円滑な実施を本町農業の最重点施策に据え、北海道開発局や地元促進期成会と連携して、事業の推進を図ります。また、受益農業者の負担の軽減や通年施工時の所得補填など、有利な制度を活用するとともに、本年度より基盤整備工事前、工事後の土壌診断や土壌硬度試験を行い、作土の特性を分析するなど町として出来る取り組みを進めます。

 小規模な土地改良や農地災害復旧についても、近年の異常気象等に対応するため、農業用排水路補修事業や明暗渠掘削特別対策事業、農地等災害復旧単独事業など、町独自の対策を推進し、新たに農業水利施設の維持管理に係る事業制度にも取り組みます。

(2)環境と調和した安全で安心な農業の推進

 本町の農業は、地域循環型クリーン農業を推進することによる安全・安心な農業の確立を目指し、良質な食料の安定的な生産・供給をはじめ、国土や環境保全、美しい農村景観の形成など多面的な機能の発揮を通じて、町民の健全な暮らしを支えるとともに、食品加工や観光など幅広い産業と結び付き、地域の基幹産業として重要な役割を果たしています。引き続き、環境と調和した安全・安心な農業の推進を図るため、土づくり対策を基本に地域有機物循環型農業を推進し、消費者に安心をもたらす農業の実現を目指します。

 クリーン農業総合推進事業(イエスクリーン栽培補助)、完熟堆肥流通促進事業、緑肥作物奨励事業、土壌診断事業、残留農薬対策等を継続して行います。
 
 中山間地域等における農業生産条件の不利を補正するため、農業生産活動を継続して行う農業者に交付される「中山間地域等直接支払交付金」、農地の維持と地域資源の質的向上を図る共同活動に交付される「多面的機能支払交付金」の事業を継続します。

(3)収益性の高い地域農業の確立と農業と観光の連携

 高収益作物の導入やクリーン・有機農業による高付加価値化、農産加工や直接販売による6次産業化、「ニセコ」の知名度を生かしたブランド化、商工観光者と連携した地産地消戦略など、自らの創意工夫を生かした多様な取り組みを行う安定的な経営の育成・確保を図ります。
 
 近年、消費者に評価を得ているニセコ産米の販売促進と併せて、酒造好適米及び蔵人衆関連商品、地場産米粉の消費拡大、地産地消や食育の推進を図ります。
 畑作では土づくりを基本にした適正輪作をめざし、計画的な作付けと安定生産とともに重点作物の選定や新規導入作物の産地化を推進します。
 酪農については、自給飼料基盤に立脚した安全で良質な生乳の生産と家畜改良の促進等による乳用牛の資質の向上を推進するため、酪農ヘルパー制度の運営や乳牛資質向上対策の支援、家畜伝染病対策、畜産クラスター事業の推進など引き続き良好な畜産環境の維持に努めます。また、農業改良普及センターと連携し、ニセコMRセンターの運営を支援します。

 平成14年12月から操業している堆肥センターは、JAようていが指定管理者となり施設を運営していますが、酪農家戸数の減少や、自家利用の増加により原料となる牛糞が減少している状況から厳しい経営が続いております。また、施設の老朽化も進んでいる状況から、適切な施設維持を行います。今後も安定した生産へ向けて、安定した経営や施設の適正な維持管理を行うための環境整備が重要となっています。引続き、施設の将来見通しや経営内容の見直しを行いつつ、良質完熟堆肥の供給を維持します。
 町集約草地は、牧柵の更新や危険箇所の補修を行い良好な管理に努めます。

(4)多様でゆとりある地域農業の確立と人材活用

 基幹作物の安定生産と重点振興作物の定着による収益性の高い地域農業の確立を目指すため、国営緊急農地再編整備事業を推進します。農業生産基盤の近代化を推進するとともに、農地利用集積円滑化団体や農地中間管理機構を通じて認定農業者・新規就農者への農地の利用集積や計画的な農地保全の取り組みを支援します。
 町、JA等関係機関で構成する地域農業再生協議会は、畑作物や水田活用等各種直接支払交付金の申請などの経営所得安定対策を担います。農業経営の体質強化では企業的な経営管理能力を高めるため、認定農業者としての先進的な経営展開や法人化の取り組みを推進します。
 戸数の減少した集落のコミュニティ再構築のため、地域住民の合意形成を基本とした集落の再編成を推進し、地域活動の活性化を促します。また、意欲ある都市住民を受け入れる「地域おこし協力隊」や「集落支援員」の活用など、引き続き地域経済の活性化を図ります。

(5)地域ぐるみでの担い手確保

 地域農業を担う優れた人材の確保が緊急的な課題であり、意欲ある農業者の育成確保に努めます。本町では、後継者不足や高齢化の進行に伴い耕作放棄地化するおそれのある農地が多く存在しています。このため、「ニセコ町人・農地プラン」に基づき、地域の中心経営体となる担い手への農地集積を加速化するため、国の制度を利用し農地の規模拡大に取り組む農業者や農地集積に協力する農業者を支援します。併せて、青年の就農意欲の喚起と就農後の定着を図るための新規就農予定者、青年経営継承者への給付金事業を推進し、新規就農しやすい環境を構築します。

 町独自の施策では、新規就農資金への支援や青年研修事業の実施、農業青年会活動の支援など、農村女性や青年がその能力を発揮し活動できる環境づくりに努めます。
 また、国営緊急農地再編整備事業の実施に合わせて、耕作放棄地の解消や意欲ある担い手への農地集積が円滑に進むよう、町、農業委員会、農地利用集積円滑化団体、農地中間管理機構と連携して取り組みを進めます。

(6)農業と観光・商業が連携した地域産業の創造

 農業、観光・商工は密接な関係にあることから円滑に連携できるよう体制づくりを進めるとともに、ニセコ地域の資源を有効に活用しつつ、生活力や生産力が向上するよう連携を深めていきます。また、環境・景観への貢献度合いを評価し、観光資源として積極的な活用が図れるように観光事業者との連携を推進します。

 観光・商工事業者と連携した地場産品の幅広い提供や地域ブランド化へ向けた取り組みを積極的に推進します。また、本年度も、緑肥作物の栽培による景観形成を積極的に支援します。
 地産地消、食育、食文化交流、農山漁村振興交付金事業等の取り組みの推進、農業者と多様な事業者が連携して行う商品開発や販路開拓、新たなビジネスモデルの構築など農畜産物の高付加価値化・6次産業化に必要な機械、施設の整備、ソフト事業を支援します。

(7)農業委員会の取り組み

 本年度も引き続き、各種法令に基づき、関係機関等と連携しながら、次の諸事項について適切かつ積極的に事務を執り行います。
・農地法、農業経営基盤強化促進法等の法令による農地等の利用関係の調整に関すること
・農地等として利用すべき土地の農業上の利用の確保に関すること
・農地等の利用の集積その他農地等の効率的な利用の確保に関すること
・法人化その他農業経営の合理化に関すること
・農業生産、農業経営及び農民生活に関する調査及び研究、農業及び農民に関する情報提供

 また、農地基本台帳の開示や農地利用の適正化へ向けた取り組みを強化していく一方、農地の賃借料の一部を助成する農地流動化事業の継続、人・農地プランに掲載される中心経営体へ農地の利用集積の推進や農地中間管理事業の適切な実施へ向けて取り組みを進めます。
 また、農業者の生活を安定する政策として、引続き農村花嫁対策としてグリーンパートナー推進協議会事業の支援を行います。

2. 観光の振興(商工観光関係)

(1)「選んでもらえる」観光地づくり(ディスティネーション)の体制づくり

 観光誘客は、観光客がそこへ行ってみたいと思ってもらうことから始まります。受入れ地側では、観光客の嗜好を調査し、こちらを選んでもらえそうな客層を中心に、その嗜好に合致した魅力を端的に伝えることが求められます。そのためには、マーケティングやPRなどの専門スキルを地域で持たなければならず、人材育成や体制づくりが要となります。これは地域における観光産業の持続性を担保し、他の観光地との競争に勝ち残っていくための基盤となるものです。これらの基礎的な機能をニセコリゾート観光協会に付加していくために、マーケティングスキルを有した人材を配置するとともに、より実効的な事業を実施できる組織づくりを支援します。
 また、ニセコエリアの広域で機能するDMOについても、引き続き検討を進めます。

(2)夏期の観光客誘致

 外国人観光客の多くは冬期間に訪れており、夏期はほとんどが国内観光客となっています。その差が宿泊施設の稼働率の変動となり、従事者の季節雇用を増やす要因にもなっています。冬の稼働率を高めるとともに、接客サービスを向上させるためには、経験を積んだ人材を増やすことが必要であり、従事者の通年雇用化が求められます。

 そのためには、季節間の変動を少なくすることが必要で、夏期の宿泊数を増やさなければなりません。ニセコ観光圏において広域的な事業展開を行うほか、ニセコハロウィンなど地域に根付いたイベントを継続実施、ニセコスターフェスのような新たな魅力づくりにも取り組み、夏期の宿泊客の増加に努めます。
 また、ニセコに滞在する目的を増やすため、着地型旅行メニューの強化継続をするほか、会議や報奨旅行などを意味するMICE(マイス)による誘客にも取り組みます。

(3)観光案内、情報発信の充実

 昨今、ニセコの知名度が上がり、初めてニセコへ来る観光客が増加しています。観光客が求めるものをしっかりと把握し、ミスマッチさせない情報提供や旅のサポートが大切です。引き続き、ニセコ駅、道の駅ニセコビュープラザに観光案内所を設置し、観光客がニセコを満喫できるよう、おもてなしの心を持って対応するとともに、適切な対応ができるよう観光案内員のスキルアップに努めます。

 また、ホームページやSNSなどのインターネットメディアを活用するほか、パンフレットやマップの作成などを行い、さまざまな人たちに対して地域の魅力を伝えていきます。

(4)地域内2次交通の確保

 毎年、冬期間になると観光客が増加し、その人たちが利用する公共交通機関が不足しています。駅から宿泊施設、宿泊施設から地域内施設などへと移動することできるよう、ニセコリゾート観光協会が実施するバス運行を支援し、ニセコフリーパスポート協議会などとも連携して、スキー場エリアとニセコ市街地との交通手段の確保に努めます。

(5)雪山の安全確保

 ニセコで最も人気があるコンテンツはスキーです。スキーヤーの中には、スキー場のみならず、その場外でもスキーを楽しむ人がいます。ニセコエリアでは、ニセコアンヌプリ地区なだれ事故防止対策協議会などが雪山の安全を守る活動を行っています。奇跡の場所とも言われるニセコのパウダースノーを世界に知ってもらうきっかけとなった「ニセコルール」の運営を強力に支援するとともに、関係団体等と連携して、安全確保における課題整理や必要な制度の検討を行うなど「雪崩事故防止対策」に取り組みます。

(6)広域観光連携の推進

 ニセコ町、倶知安町、蘭越町の3町がニセコ観光圏を構成し、連携して地域の魅力づくりに取り組んできました。本年は法改正があり予定より1年早く新たな事業「広域周遊観光促進のための新たな観光地域支援事業」へ移行します。本年も引き続き3町により事業を継続させ、外国人観光客の増加をめざします。

3. 商工業の振興と労働対策

(1)商工業の振興による地域経済の活性化

 ニセコ町商工会は町の経済活動の中核を担っています。地域経済を維持、活性化させるためには、商工会の機能を最大限に活用し、商工業振興、地域振興に資する事業に取り組んでいく必要があります。町では継続して商工業振興事業補助による活動支援を行います。

 また、綺羅カード会が実施する綺羅カードは、昨年にシステムを更新し、加盟店や利用者の利便性を向上させています。これらの機能の高度利用を進めるとともに、加盟店、利用者の増加に努め、子育て世代による町内消費拡大事業「キッズカード事業」についても引き続き支援を行います。

 このほかにも夏の一大イベントに成長した七夕の夕べ花火大会や、綺羅街道を会場に開催される地元イベント綺羅キラ市など、商工事業者や地域の有志が主体となって実施する独自事業を支援することなどで地域経済の活性化に努めます。

(2)新たなビジネス、起業の支援

 昨今、ニセコエリアでは観光産業を中心に経済が拡大しており、それに伴いさまざまな仕事を担う事業者が増加しています。特に小規模ビジネスは転業や起業が行いやすく、地域のニーズ対応や魅力向上にも貢献しています。町では、ニセコ町商工会と連携してワンストップ相談窓口を設け、積極的に起業を支援しています。本年もニセコ町商工会をはじめ、地域金融機関、小樽商科大学等と連携しながら相談窓口を運営し、起業を強力に支援するとともに、ニセコ町商工会が主催するビジネススクールの拡充を図ってまいります。
 平成28年度から運営が始まった中央倉庫群について、対日直接投資を含めた新たな投資と交流を生む場として、また、本町の資源を活かしたテレワーク事業の拠点として活用を促進します。

(3)企業等の誘致

 本町では、地域特性やニーズに合致し、ともにまちづくりを進めるパートナーとしての投資に対応するため「ニセコ町企業立地ガイドライン」を策定しています。
 昨年度は地域未来投資促進法に基づく基本計画を策定し、観光関連事業者の設備投資等を後押しする環境を整えております。
 近年、道内銀行や大手企業から集合住宅やホテル建設等の相談が少なからず持ち込まれる状況となっております。一方で、用地の確保や基本的なインフラ整備が投資案件に対応しきれていない課題もあります。このため、投資案件毎にきめ細かな対応を進めつつ、良好な投資を迎えるためのインフラ整備や窓口機能について検討を進め、ニセコ町に適応した企業の誘致を促進します。なお、本年はニセコのまちづくりに共鳴する企業の誘致、低廉な価格のビジネス客が宿泊できるビジネスホテルの誘致等を推進します。

(4)消費生活対策

 悪質商法や消費生活に関するさまざまなトラブルから消費者を守るため、平成22年度から本町を含む近隣7町村で構成する「ようてい地域消費生活相談窓口」をニセコ町役場内に設置しています。
 本年度も継続して相談窓口を運営するほか、参加町村が実施する消費者への啓発活動などを積極的に支援し、潜在化している消費者トラブルの掘り起こしに努めます。また同時に、窓口の存在を広くPRし、消費者トラブルに巻き込まれ苦しんでいる人が早い段階で解消できるよう、活動の充実に努めます。

このページの情報に関するお問い合わせ先

ニセコ町役場
TEL:0136-44-2121
FAX:0136-44-3500